UGC を捉え直す 2023 年
ぼくが最初に UGC という概念に触れたのはいつのことだったか。同時期に CGM (Consumer-Generated Media) という概念も多く語られていて、ふたつはだいたい同じ文脈で使われていた。
2008 年の年初にはタイトルに「CGM」を含む書籍を購入しているので、おそらく 2007 年にはすでにそういった概念に馴染みがあったと思われる。2007 年といえば、ぼくが Twitter や Tumblr や Facebook に登録した年なので、この時期に「利用者の投稿がそのままコンテンツになるってことね」と感覚的に理解していったことは間違いなさそうだ。
https://www.amazon.co.jp/dp/4844325078
https://gyazo.com/b3ec9150c16bce000a30a701580c7888
Web 2.0 の大きな波によって、誰しもがコンテンツをつくって発信する時代が到来した。この時期には、生産者 (Producer) と消費者 (Consumer) と組み合わせた造語である Prosumer という言葉もよく聞かれていたと記憶している。
生産消費者 (せいさんしょうひしゃ、prosumer) もしくは生産=消費者、プロシューマーとは、未来学者アルビン・トフラーが1980年に発表した著書『第三の波』の中で示した概念で、生産者 (producer) と消費者 (consumer) とを組み合わせた造語である。生産活動を行う消費者のことをさす。
生産消費者 - Wikipedia
1980 年に示された概念が、Web 2.0 という潮流の中で実感として知られるようになっていったということだろう。
さて、その後の人類は「大スマートフォン時代」とでも呼べそうな 2010 年代を経験し、ぼくがこれを書いているのが 2023 年。今では「誰もが発信できる」というのは当たり前すぎて、わざわざ Prosumer という言葉が持ち出されるまでもなくなっている。もちろん、どんな状況であれ「自分はそういうのやらないんで」という人がいるのは理解しているが、それにしても「友人が Instagram に写真を投稿している」と聞いて驚くようなことはほぼないと言っていいだろう。
そうなってくると、UGC の U の字が指す User の意味が希薄化してくる。2007 年であれば「そういったツールを能動的に使っている人」というニュアンスを感じ取ることができたが、2023 年においては、発信することに大きな決意も覚悟も伴わない。この時代に生きている人なら、どこかになにかを投稿することくらいふつうにあるでしょうよ、くらいの温度だ。言ってしまえば User-Generated Content は、そのまま Human-Generated Content のことではないか。User とは、そのまま Human のことだ。
Producer と Consumer の境界は極限まで薄くなり、区別することもなくなり、Human-Generated Content となるのならば。それってつまり「コンテンツ Content」じゃん、と思った。わざわざ Human-Generated と修飾する意味はなくなっているのでは?
しかしこの 2023 年、わざわざ Human-Generated Content と呼ぶことの意味は、別のアングルからもたらされた。つまりこれは、AI-Generated Content と区別するための言葉だったのだ。
UGC は今では HGC と言ってよい状況になり、そしてこれは、AGC と対比する概念としてぼくの前にあらためてビビッドに浮かび上がってくるのであった。そのことに気が付いて興奮し、こうしてエッセイを書いた。